osupureimaruのブログ

独学で難関大学の合格体験談

桐野夏生文学紹介2 読書の秋

 こんばんは。今回も私が大好きな作家の一人である桐野夏生先生の作品を紹介します。前回は、「緑の毒」と「路上のX」を紹介させていただきました。興味のある方はどうぞご覧になってください。前回でもお話させていただいたように、桐野夏生先生は、人間の毒というものを文字だけで巧みに表現する作家様です。多種多様な人が生きている現代社会の日本においては、全てが階層的な社会構造になっています。当然子どもたちにとっての社会である学校も、いじめから読み取れるように序列型の社会構造になっています。会社はもちろん、ありとあらゆる共同体は階層社会です。強いものが弱いものを従え、弱いものがさらに弱いものを支配する。そんな共同体の中で生きている人間の心はどうなるでしょうか?黒くなりますよね。桐野夏生先生の書く作品はそういった方向性です。


 さて、今回ご紹介するのは「東京島」です。この作品は、2008年、谷崎潤一郎賞を受賞しています。映画化もされました。本が好きじゃない方は映画を見てみるといいかもしれません。ウィキペディアを参照したあらすじを画像の下に書いてありますので読んでみてください。この物語のテーマなるものを一言で表すと、「性」です。島に何十人の男と、たった一人の女が共同生活をするというのがどういうことなのか。たった一人の女をめぐって男たちの信頼関係が崩れていく様。女も自分の性を利用して男だらけの島で生き抜こうと考える。人間の根底にあるのは欲望です。追い込まれれば追い込まれるほど欲望には勝てません。人間的な野生本能ともいえる様々な欲望が渦巻く島の物語をぜひ読んでみてください。




クルーザーで夫・隆と世界一周旅行に旅立った清子。だが出発からわずか3日目に嵐に遭い、数日間漂流した後に2人が漂着したのは、どことも知れぬ無人島だった。それから間もなく、与那国島での過酷な労働に耐えかね、島からの脱出を図った23人のフリーターたちが途中で台風に遭い、島に漂着する。さらには日本への密航途中で金銭トラブルに発展した11人の中国人たちが島に置きざりにされる。無人島に流れ着いた男たちと1人の女。いつしか「トウキョウ」と呼ばれるようになった島で、唯一の女である清子は性を武器に逞しく生き抜いていく。